建学の精神にある「自然順応」とは、この世界のすべてをあるがままに受け入れることであり、無為自然な生き方を学ぶことでもあります。それは、四季の移ろいに合わせて暮らしぶりを変え、またその変化に美を感じてきた日本人の心そのものとも言えましょう。自然農法の実践を通して、先人たちの謙虚で素直な姿勢に学びつつ、自然順応の生き方について考えていきます。
たたみ2畳分、1人1坪割り当てられた「マイガーデン」で、生徒たちは無肥料・無農薬の自然農法により、さまざまな作物を育てます。土と水と太陽の力だけを信じて無心に世話をし、やがて収穫した作物を口にするとき、子どもたちは畑と一つになり、生命の調和を肌で感じているように思います。小さな畑は、“目に見えない力”への感動と、感謝を教えてくれる自然の教科書です。
無農薬・無肥料の自然農法の圃場で学ぶMIHOプログラムでは、作物だけでなく、さまざまな生き物が生息し、それぞれが生命の環のなかで役割をもち、限りある命で互いを養い合っている様子を観察することができます。人間の営みと調和しながら育まれてきた里山の自然を身近に感じながら、人間も宇宙に活かされている生命の一部であることを感じてほしいと思います。
美学院の校是である「三つの芸術活動」は、生活の芸術化活動と言いかえられます。生活即教育の毎日のなかで、どんな小さなことも一つひとつ、真善美を求める心で行うことで、より美しく、調和のとれた世界を私たち自身の手で生みだすことができます。誠の心をもってすれば、調理も清掃も芸術活動となることを、身体で理解するようになります。